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『祇園の夜桜』(左)と烏帽子 姿の白拍子

 第二部では、河野喜一理事長が「日本の武道、日本の民族の関わり」について講演。稲作が盛んな日本では、水田で足の半分が水に浸かるので、身動きがとれない。そうした中で、体をあまり動かさずに危険から守る武術が生まれた」と解説。

 美剣体道の範主でもある河野理事長が、実際に頭を叩かれた場合、柔道のように両肩を捕まれた場合、日本刀を振りかざされたケースについて、体をあまり動かさずに相手を軽々しく倒したり投げてしまう演武をしてみせ、会場を湧かせました。
 また、イギリスについて、「世界の政治の中心はイギリス。世界中で戦争をしているが、戦争をしないで世界を平和に導いていくのは、この民族だと思います」と語りました。
 その後、会場の日英の参加者らは、師範の河野容雄氏や、イギリス留学中の坂本東生師範代の指導を受けながら、美剣体道の稽古を体験、交流を深めました。
 最後に河野理事長は、「ここに集まったのはたくさんいる日本人とイギリス人の頭です。日本人はありがとうという意味を込めて、お辞儀と言って頭を下げます。どうぞお立ち下さい。そして日本式にお辞儀をしましょう」と式典を締めくくりました。


水田と関わり深い日本の武術

河野理事長が講演と演武

 昨日、マンチェスターを拝見しましたが、美しい畑がたくさんあるけれど田んぼがありません。日本には、水田があり、そこで稲を作ります。田んぼでは足の半分が水の中に入りますので、狼とかに襲われた時に身動きがとれません。体をあまり動かさないで危険から守る、それが日本の武術が生まれた原因です。
 会場の後ろに、日本で一番純粋な家屋である数寄屋造りの家の写真があります。かつての日本の中心、京都で生まれました。京都の北山杉を材料にしていますが、北山杉は、枝打ちといって、枝を落として20年〜30年育てられ幹が太くなりません。細いけれども強いのです。
 私が着ているのは、和服という着物ですが、仕事をする時、袖が邪魔になるので、紐を使って襷をかけます。すると、余分なものがなくなります。杉の木の枝を落とすのと同じです。
 私はあなたと仲良くします、という礼から始まります。これを礼節と言います。ですから、相手を倒す稽古ではありません。体を操りながら、全身を整えていく。すると全身のバラスがとれます。生活にバランスがとれると、人生にバランスがとれ、その人に平和がきます。
 柔道は両手の肩を掴みますが、掴んだ方は両手が使えません。掴まれた方は両手が自由です。どんなに両手で掴まれても、自分が動かずに相手を倒します。
 日本刀を模造して造った木刀でも稽古をします。剣をまっすぐ振り下ろします。振り下ろせば斬られます。農耕民族は、何も持っていません。動けません。でもあまり動かずに、我が身を守ります。これが昔から伝わっている日本の武芸です。

 私は子供の頃から体が弱くて、すぐに熱を出していました。ところが、大人になって、食べ物が体に合わなかったというのが分かってきました。
 幼い頃、私の家は豊かで、おいしい物がたくさんありましたが、肉、魚を食べると熱が出て、学校を休む。日本人という大和民族は農耕民族で、農作物を食べて生きるよう、大腸の長さもできていた。寒い国の人が肉を食べてもいいように腸の長さがコントロールされていますが、日本人は、そうではない。それに気が付いてから、肉を食べるのを止め、お米と野菜しか食べません。それから体は丈夫になりました。
 81歳になりますが、特別な栄養はとりません。その国に合った食べ物をとれば、一番健康になります。
 世界地図を見ると、イギリスは北極に近い、方角的に日本の西北にあります。東洋に伝わる哲学では、西北は生き物が働きを終えて一休みするところ、力を蓄えて振り出しに戻って、そこから出直す場所が西北です。
 一方、日本の国は、東洋ですが、地図全体でみると、東と西の真ん中、出発、終点の真ん中にあります。おかげで、世界中で一番戦争がありません。
 なぜ文化交流会をイギリスでやろうと思ったか。イギリスほど、世界中に新しい国を造る力を持っている国はない。イギリスの人は、とても純粋です。感覚的に枝を落とした、まっすぐできれいな北山杉に思えます。
 世界中の乱れが集まってきて、きれいに掃除されて出直すには、この国は一番いい。世の中を治めるのは政治ですが、世界の政治の中心は、イギリスです。世界を平和にしていくのは、この民族と思いました。
 そのイギリスの人がこれから先、私たちのような東と西の真ん中で育った人間と手を結んでくださるのはとても大切なことと考えております。